響の会〔清水寛二・西村高夫〕
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道成寺
曲名: 道成寺《どうじょうじ》
作者: 観世小次郎信光(一説)
季節: 春(旧暦3月)
場所: 紀伊・道成寺
分類: 四番目物・二場
上演時間: 約2時間
上演データ: 第1回 響の会
1991年4月6日(土)
宝生能楽堂
シテ・清水寛二


第2回 響の会
1992年6月27日(土)
宝生能楽堂
シテ・西村高夫


第16回 響の会
2005年5月21日(土)
宝生能楽堂
シテ・清水寛二


第17回 響の会
2006年4月30日(日)
宝生能楽堂
シテ・西村高夫
※ 小書「赤頭(あかがしら)」
道成寺
清水寛二〔撮影:前島写真店〕
道成寺
西村高夫〔撮影:前島写真店〕
●あらすじ
文・表きよし(国士舘大学21世紀アジア学部教授)
 紀州道成寺では釣鐘のない状態が続いていたが、ようやく釣鐘が再興され、鐘供養が行われることになった。道成寺の僧(ワキ)は特別な事情があるので供養の場は女人禁制であると能力(アイ)に申し渡す。そこにこの国に住む白拍子(前シテ)がやって来て、舞を舞うので鐘を拝ませてほしいと言う。能力は女人禁制だからと一旦は断るが、舞が見たいので特別に白拍子を入れることにする。白拍子は静かに舞(乱拍子)を舞い始めるが、やがて舞は激しい調子に変わり(急之舞)、白拍子が鐘に近づいたかと思うと、鐘が落下して白拍子の姿も鐘の中に消えてしまう。
激しい音に驚いた二人の能力は、鐘が落下していることに狼狽し、このことを住僧に報告する役目を押し付けあう。ようやく報告を受けた僧は、供養の場に白拍子を入れたことを聞き、この寺の鐘にまつわる話を従僧(ワキツレ)に語る。祈りの力で鐘を再び鐘楼に上げようと僧たちが鐘に向かって祈っていると、鐘は震動して鳴りはじめ、やがて鐘の中から蛇体(後シテ)が現れる。蛇体は打杖を振って住僧たちを威嚇しながら鐘への執心を示すが、住僧たちの祈りの力に屈服して日高川へと姿を消す。

〔'05/5/21 第16回 響の会 パンフレット掲載〕
●解説
文・表きよし(国士舘大学21世紀アジア学部教授)
 作者不明の四番目物。熊野参詣の山伏の常宿だった家の娘が、若い山伏を自分の夫になる人と思い込んで結婚を迫り、驚いて逃げる山伏を追って竜の姿となり、道成寺の釣鐘に隠れた山伏を鐘ごと焼いてしまうという『道成寺縁起絵巻』などに見える話を素材とする作品。室町後期に〈鐘巻〉という作品が作られたが、そのうち道成寺創建の縁起を紹介した部分などを大胆に削除して簡略化したのが本曲であり、見せ場が連続して技術的にも大変難しい作品である。舞台に作り物の鐘が吊られるところからすでに緊張感が漂い、小鼓に合わせて足を踏み出したりつま先やかかとを上げ下ろししたりする「乱拍子」の息詰まる雰囲気から、一転してテンポの速い「急之舞」に移り、一歩間違えば怪我にもつながる鐘入りへと続く。鐘が落下したことにとまどうアイのやり取りや、ワキの物語も大切な見せ場であり、後場の蛇体となったシテとワキとの厳しい対決に至るまで、見ごたえのある作品となっている。本日の上演ではワキ登場の部分が音取・置鼓となり、重厚な雰囲気を醸し出す形となる。

〔'05/5/21 第16回 響の会 パンフレット掲載〕
●あらすじ
文・山中玲子(法政大学能楽研究所教授)
 昔、紀伊の国まなごの荘司の娘は、父の戯れ言を真に受け、自分の家に泊まる熊野参詣の僧を将来の夫と亜信じて月日を送っていたが、ある年、僧に結婚をせまった。僧は驚き、紀州道成寺まで逃げ、鐘の中にかくまってもらう。僧の後を追う娘は毒蛇となって日高川を渡り、道成寺に着くと鐘に巻き付いて中の僧もろとも鐘を焼き溶かしてしまった。
 能はこの道成寺伝説の後日譚である。

 桜が満開の春の日、久しぶりに鐘が再興された道成寺で落慶法要が行われる。住僧(ワキ)の命令を受け、能力(アイ)は女人禁制を触れるが、一人の白拍子(前シテ)が現れ供養を拝ませてくれと頼む。駄目だと言う能力を「舞を舞ってみせるから」と口説き落とし、入場を許された女は、烏帽子を着け(物着)て乱拍子を踏み舞う。が、人々が居眠りをした隙に鐘を落とし、その中に姿を消してしまう(中入り)。報告を受けた寺僧は、他の僧達にかつてこの寺で起こった事件を語り、今回もその女の執心が鐘を落としたのであろうと、力を合わせて祈る。法力で鐘が上がると、中から蛇体となった鬼女(後シテ)が現れ激しく抵抗するが、やがて祈り伏せられ、日高川の深淵に飛び込んで消える。

〔'92/6/27 第2回 響の会 パンフレット掲載〕
●解説
文・山中玲子(法政大学能楽研究所教授)
 白拍子が鐘を落とす程の怨念を抱えていることは、前場では語られない。シテの演技や囃子・地謡の調子などから感じられるいかにも何かありそうな雰囲気が、[乱拍子]から[急ノ舞]、そして[鐘入り]の瞬間へと高まってゆき、緊張がはじけて鐘が落下した後、住僧の口から初めて事情が語られるという作りの能で、それを支える秘事秘伝が一曲全体に張り巡らされている。

〔'92/6/27 第2回 響の会 パンフレット掲載〕
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