響の会〔清水寛二・西村高夫〕
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カレン・カンデル氏「意識の逃げ場のない舞台で」
カレン・カンデル カレン・カンデルさんは、ニューヨークを拠点に活動する女優さんです。リー・ブルワーを芸術監督とする実験演劇集団マブ・マインズに所属。「リア王」「ピーターとウェンディ」「メデア」など数多くの舞台に出演しています。三月に来日、清水さんに能のお稽古をつけていただきました。
* * *

─ ニューヨークで能を見たことがあったのですか?
カレン 本で読んだり写真を見たり話を聞いたりしていたけど、実際の舞台は見たことはありません。

─ では、能を学んでみたいと思ったのはなぜでしょう?
カレン 能の動かないことが魅力的だったんです。すべてのエネルギーが俳優の中心でバランスがとれている表現 ― それを自分のからだで体験し学んでみたかった。能におけるミニマリズムというか、非常に微細な表現が大きな力をもつことに興味があったんです。マスク(仮面)の表現も昔から気になっていたし……。

─ 清水さんの稽古はかなり過激で、稽古初日に装束と面をつけさせられたんですよね。
カレン まず自分の感覚で橋懸かりから舞台を一周しておいでと言われました。それから立ち方(カマエ)と歩き方(ハコビ)を教えてただいて、清水先生のあとについて舞台を一周。今度はひとりでと言われ、能舞台という秘密の世界に自分がひとりで放り込まれた気がしました。能舞台の空間は西洋の舞台空間と非常に違う。意識の逃げ場がない。その後、突然「じゃ、装束と面をつけてみようか」と言われ、何が起っているのかわからないままキモノを着せてもらい、鏡の間でマスクやカツラをつけていると、これが別世界を再現する儀礼の始まりだということがよくわかりました。儀礼というのは単に形式的や情緒的なことではなく、非常に具体的な演劇的プロセスのこと。舞台というのは、いつでも自分より大きなものでしょ。そこに立つための演劇的仕掛け。

─ 能のシテが演ずるのは人間だけではなく時には植物の精とか超自然的な役が多い。「羽衣」を稽古したわけですけど、天人というキャラクターに違和感はありませんでしたか?
カレン これまでもギリシャ劇のメデアなど神秘的な役を演じてきたから、別に違和感はなかったですね。でも、こういう人間のスケールを超えた役を演ずるのは非常に難しい。とても面白いけど……。

─ 能の稽古をしてどうでした?
カレン 日本語ができないから、セリフは難しかった。翻訳で意味はわかっていたけど……。清水先生が言うセリフを音として聞いてそれを繰り返す。注意していたのは、響きのもつエネルギーとリズム。向かい合ってしたセリフの稽古が印象的でした。舞は時間がなかったからあまりよく憶えられなかったけど、きちんとセンターがとれた立ち方ができないと駄目だと思いました。自分で稽古したり能の舞台を見に行って思ったんですけど、同じ動きが異なる表現になるのがとても面白いですね。それがフォーム(型)ということかもしれませんが、リズムや言葉との関係でまるで違う表現になる。

─ 響の会の公演を見ての感想を。まず、清水さんの「花月」は?
カレン とにかく印象的だったのはシテの少年の悲しみと孤独感。桜が満開の季節だとか、最後に父親と再会するというストーリイは知っていたんですけど、それでも最後までその悲しみと孤独感が残った。清水先生が言っていた「あの少年はきっと何かとてつもなく恐ろしい体験をしたんだ」という言葉や、笠原さんが言った「別世界の刻印をおされた少年」という言葉で、なるほどそういうことなのかと……。

─ 西村さんの「道成寺」は?
カレン 乱拍子はすごい。ああいう表現はわたしの知っているかぎり西洋演劇にはありません。ただ足をあげるとか体の向きを変えるとか、ひとつの動きにあれだけのエネルギーが込められたダイナミズムというのは……。非常にスリリングでした。もう心臓がドキドキしっぱなし。もっともまだ物語が始まる前、あの鐘が吊られたときにはもうかなり鼓動が速くなっていたんですけど(笑)。

─ もっと能を稽古してみたいですか?
カレン 今回の日本滞在の後半はわたしが出演する作品の稽古が忙しくなって、時間的にも精神的にも能の稽古ができなくなってしまいました。それがとても心残り。またなんとかチャンスを作って勉強したい。日本舞踊はニューヨークにも先生がいるけれど、能を教えてくれる人はいません。清水先生、ぜひまたよろしくお願いします。

─ 東京で稽古していた作品はどんなものですか?
カレン 日本の芸者を素材にシンガポール出身の中国人の人が作・演出した作品。日本舞踊の五條雅之助さんが踊り、三味線の杵屋勝松さんがコンピュータ・サウンドと一緒に演奏、わたしは語り手。語り手といってもじっとしているわけではなくて、いろいろ動きますけど……。まずサウスカロライナのアートフェスティバルで幕を開け、そのあとシンガポール、最後にニューヨークのリンカーンセンターで上演。残念だけど日本で上演の予定はありません。というわけで、日本を後にしてもまだしばらくはニューヨークに帰れないんです。オン・ザ・ロードというわけですね。でも、今回の日本滞在は能の稽古もふくめて非常に実りあるものだったと思います。また必ず日本に来ます。
(カレン・カンデル・女優/Interviewed by 笠原拓郎)
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